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ブラック企業アナリスト新田龍の「ブラック企業完全対応マニュアル」

楽しく働く人を応援するメディアQ-SHOCKをご覧の皆さん、こんにちはタカタタンです。楽しく働きたいけど職場がハードすぎて流石に疲弊してしまっている 、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこでこの度は、働くというテーマで外せないブラック企業問題について専門家から夜の街渋谷を歩きながら話を聞いていました。

 

プロフィール

 

新田龍(Ryo Nitta)

働き方改革総合研究所株式会社 代表取締役 / ブラック企業アナリスト

1999年、早稲田大学政治経済学部卒業後、「ブラック企業就職偏差値ランキング」上位企業で事業企画、営業管理職、人事採用担当などを歴任。2007年「働き方改革総合研究所株式会社」を設立。ブラック企業問題の専門家「ブラック企業アナリスト」を名乗り、労働環境改善のコンサルティング、ブラック企業相手のこじれたトラブル解決を手掛けるとともに、メディアで労働問題を語る。厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進委員。

 

最初に課題を抱いたのはブラック企業に入社してしまう人の多さ

ブラック企業に勤めていた頃の新田さん

ーブラック企業アナリストとして活動されるようになった経緯を教えてください。

「自分の勤める会社が、世間から『ブラック企業』と呼ばれてる!」と気づいたことが最初のきっかけです。

私自身は昔から「将来は起業する!」と宣言していて、実際、大学在学中に一度イベント会社を興してそこそこの成功体験を得ていました。でも結果的にお金が残らず、「マネジメントも金勘定もまったく分かってない… どこかで修業しないと…!」と考え、「短期間で中身の濃い経験が積めて、頑張れば頑張った分だけ報酬が得られる会社」を選んで就職活動しました。結果的に当時急成長中のベンチャー企業の事業企画職で、創業会長のアイデアを実行に移す部隊の仕事をするところから社会人生活が始まったんです。

 

仕事は早朝から深夜まで、繁忙期は月に数回家に帰れるかどうか…くらい大変ハードなものでしたが、新人にも関わらず重要な仕事を任され、報酬も働きに応じて3ヵ月ごとに上がっていったので、個人的には希望が全て叶って満足してました。しかし、ネットで出回る「ブラック企業就職偏差値ランキング」では、私がいた会社がワーストの位置にランキングされていたんです。そのときは「まあ確かにハードだけど、自分はこんなに満足してるのにワーストはおかしいよな…」程度の印象でした。

 

私はその後、お誘いを頂いた会社に移り、キャリアコンサルタント、そして人事採用担当として、およそ3万人の方々と面接・面談をしてきました。そこでまた別の気づきがあったんです。世間では「ホワイト企業」と言われるような、ビジネスが安定していて、残業もなく、給料も高い会社に勤める人が、「辞めたい…」といって相談に来られるんです。最初は「そんな優良企業にいるのになんで…?」と疑問に思いましたが、よく聴いていくと、表面的には分からないいろんな理由が出てくるんですね。「上司からのパワハラが酷い」とか、「ルーティンワークばかりで飽きた」「居心地はいいけど社内スキルしかつかず将来が不安」とか… 

 

私は「世間でブラックと言われる会社にいたが、満足している」。目の前の人は「世間でホワイトと言われる会社にいるが、不満である」。ここに大きなギャップと、不幸なミスマッチがあることに気づきました。当時はまだネット上の情報といえば、企業側で編集された一方的かつポジティブなものばかりで、今みたいに本音が見られる口コミサイトもなく、入社前に会社の情報を多角的に得られるような時代ではありませんでした。まずそこに課題感を抱きましたね。

 

そこで感じたのが、就活前の「キャリア教育」の必要性です。書類作成や面接のテクニックを磨く前に、そもそも自分の価値観はどういったもので、どう生きたいのか。世の中にはどんな仕事が存在していて、どんな価値観の人にどの仕事がフィットするのか。ライフプランとキャリアプランを合致させるにはどうすべきか、といったことを、就活前の大学1~2年とか、高校生に伝えて、不幸なミスマッチをなくし、世の中働く人のマインドをハッピーにしたい!そんな思いが強くなり、キャリア教育事業を興すことにしたのが29歳のときでした。

 

単位がつく正課授業の講座コンテンツを作成し、それを私が講師として教えるという「キャリア教育プログラム」を大学に営業し、実際にいくつかの大学で導入して頂きました。単なる就活講座ではなくて、働く意味とか大変さとかを知ってもらおうという趣旨のものですよ。お蔭様で幸いにも好評で、とくに「ホワイト企業にも不満な人がいて、ブラック企業にも満足してる人はいる」とか「ブラック企業の見抜きかた」といったブラック企業ネタはウケが良かったんです。

 

当時「ブラック企業」という言葉はそこまで世の中に浸透していなかったので、これは名乗った者勝ちだと思い、自分で「ブラック企業アナリスト」という肩書を勝手に作って名乗りはじめました。2008年頃のことです。

 

ー「ブラック企業」というネーミングは面白いですね。

ブラック企業という言葉の由来については、「求人広告業界の隠語だった」とか「パソコン通信時代のコミュニティから」など諸説ありますが、世の中に広がり始めたのはリーマンショック前後、一部の下請ITエンジニアの方々が、自分たちの労働環境の酷さを自虐的に「俺たちブラックだよな」と言い出したのがきっかけだと認識しています。ちょうどその頃に、ブラック企業にまつわるエピソードが本になったり映画になるなどして一般に普及していった形です。

 

ー当時の「ブラック企業」とはどういう企業を指していましたか?

もともとは「反社会的集団などと繋がって、違法行為を繰り返すような企業」を指していました。当時でいうと、銀行が融資してくれないような中小零細企業に融資するノンバンクがニュースになってましたね。それがもう闇金もビックリするくらいえげつない取り立てをするんです。返せなければ「腎臓売って返せ!」など、ヤクザまがいの恫喝をして社会問題になり、貸金業法違反として事件になってました。今は言葉の定義が、「法律を無視したり、法の不備を悪用して従業員に長時間労働を強制し、使い潰してしまうような企業」と認識されています。

 

世間が注目するブラック企業裏話

 

 

ーブラック企業話で世の中から反応の良い話はありますか?

やはり反響が大きいのは、「世間から良いイメージのある企業が実は超ブラックだった」という話ですね(笑)

例えばメガバンクなどは、就活生からの人気ランキングでは常に上位にランクインしますが、職場によってはパワハラ・セクハラがひどく、労働環境として劣悪だという告発はよく聞きます。

 

地元志向の方からの人気が根強い地方銀行や信用金庫なども年功序列が徹底していることから、頑張ったからと言って給料が上がらず、「新卒から2年連続で社長賞を獲っても何もインセンティブがなく、やる気がない先輩よりも給与が低いままだから退職を決意した」なんて具合です。

 

同じく人気の総合商社も似たような傾向があります。年収は高く、勝ち組に見えますが、実は裏では結構あくどいことを色々やっていたりするんですね。いい商材をもっているメーカーさんや、いいサービスを考えたWEB系の会社さんなどに巧みに近づいて、「うちの販路で売らせてください!」「業務提携しましょう!」などと提案して、契約書を取り交わします。実はその契約書が曲者で、取引先は「大手商社とビジネスできる!」と喜んだのもつかの間、実際に取り交わされたのは「業務提携契約書」じゃなくて「独占知的財産管理契約書」で、担当者は知らずに判を押し、ライセンスをそっくり乗っ取られてしまったり… 

 

別のケースでは、商社は最初メーカーの代理店として商品販売し、取引規模が大きくなったところでちょっとした理由をつけて一時的に入金を遅らせました。入金が途絶えたことでメーカー側の生産にも影響が及んで、納期遅れが発生したんです。商社はそこで「契約違反だ!」としてメーカーを提訴し勝訴。これでブランド乗っ取りが完了です。しかし契約書にハンコを押してしまっているので、その書類を引っ張ってきても解決になかなかなりません。ニュースにならないだけで、こういうことは色んな所で起こっているんです。

 

ー商社の社員は給料に繋がらないそういったことをするのですね。

そうすることで「ビジネス規模が拡大し、評価される」という前提に加え、昔から同じようなことを上司もやっていたりして、「そんなに悪いことと知らずに手を染めてしまう」といった構図もあります。最近だと某大手住宅メーカーの太陽光発電部署の事例があります。

その営業所長が、太陽光パネルを売りこみたいメーカーに対してリベートを要求しました。ただ直接お金を受け取るのはまずいと考えたのか、シンガポールに租税回避のための架空企業を設立し、「コンサルティング料」という名目でそのメーカーに数千万円を振り込ませて、仲間で山分けしていたんです。最近それが内部告発で明らかになり、彼は自主退職するとともに、国税から追徴課税されました。そういったことは明らかになってないだけで、世の中普通に存在しますよ。

by
早稲田大学大学院卒の27歳。 Tokyo XR Startups、レオス・キャピタルワークスにおけるインターンを経て、早稲田起業家養成講座に触発されDARSと共にQ-SHOCKを開始。現在は、for Startups, Inc.でヒューマンキャピタリストとしても活躍中。趣味は読書とカフェ巡り。ビールが大好き。
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