楽しく働く人を応援するメディア

ブラック企業アナリスト新田龍の「ブラック企業完全対応マニュアル」

ブラック企業アナリスト新田さんのメイン業務は「世直し」

 

勤労感謝の日に開催した、“ブラック企業体験会”は反響を呼んだ

 

ーブラック企業アナリストとしてどのようなことをされていますか?

一言でいうと「世直し」。具体的には「ブラック企業の労働環境改善」と「ブラック企業絡みのトラブル解決」ですね。

 

「労働環境改善」は文字通り、長時間労働や低生産性で苦しんでいる企業に入り込んで、仕事の進め方やマネジメント手法、評価制度などを見直して、働きやすい環境に改善していくサポートをおこないます。

 

後者の「トラブル解決」は被害者が「個人」のケースと「法人」のケースがあり、個人の場合は「残業代が出ない」、「休みが取れない」、「パワハラに遭っている」…といった相談に対応します。ただこの領域は専門に対応されている行政窓口や団体があるので、私からは「スムースに辞める方法」「被害を回復する方法」などについてアドバイスを差し上げ、必要に応じて転職支援のサポートを差し上げる程度です。

 

私の強みが発揮できるのは「法人向けの企業間トラブル解決」のほうですね。独自ノウハウによって極度に専門特化したソリューションを提供している、自称「ブラックオーシャン市場」の仕事です。具体的には「契約してお金を払ったのに納品されない」「納品したのにお金を払わない」「ノウハウや商標をパクられた」「ビジネスを乗っ取られた」「ライバル企業から妨害工作を受けている」…といったこじれたトラブルの解決で、特にお互い契約書をキッチリ結んでサインしてしまっているため、弁護士に依頼しても埒が明かないような「手遅れ案件」の対応を専門にしています。

 

いくら納得いかないトラブルがあったとしても、双方が契約書にサインしている限り、「お互い合意の上でのビジネス」扱いになってしまい、弁護士が入っても裁判に持ち込んでもなかなか解決しないんですよ。そういった「法律では手の施しようがないトラブル」に対して、我々は専門の弁護士や証拠調査士、探偵などと共に「トラブル解決ドリームチーム」を組んで、いろんな裏工作や情報戦など場外乱闘をやって、相手の痛い所を突くかたちで個々の課題を解決し、被害回復するという仕事をやっています。

 

Youtube等でも世直し情報発信をし続ける

 

ーそれってすごく大変ですよね?

 

大変ですよ!悪いヤツらが巧妙に仕組んだ罠を嗅ぎつけては台無しにしていくんですから、相手からは当然恨まれますし。命を狙われてもおかしくない仕事です。実際、そういった手口を実名で告発した記事に対しては名誉毀損で裁判になったことがありました。私は事実を書いただけですが、加害企業側からは「お前の記事のせいで社員が辞めたり、取引先がなくなった!新たに人を採用するための費用と、売上が下がった分の損害を払え!」などと言ってくるわけです。自業自得なのに。

 

私の場合、ブラック企業だけではなく、企業に寄生してロクに働こうとせず、権利ばかり主張する「ブラック社員」も同様に批判するので、左右両サイドから叩かれるんです。Twitterでは日々クソリプにまみれてますよ。あとは電車乗るときは痴漢冤罪に巻き込まれないよう注意するとか…

 

長年やってるのでそういったプレッシャーやらトラブルにはすっかり慣れてますが、これはもういちいち気にしてたらどうしようもなくて、いわゆる「鈍感力」がないとやっていけないですね。それより、私たちの仕事が多少なりとも「世直し」に繋がって、トラブルに苦しむ皆が幸せになったらいいじゃないかという「使命感」しかありません。

 

ー世間一般から見ると、あまりいい企業と思われていないけれど、実は良い企業もありますか?

 

いちばん有名な会社だと「ワタミ」です。ブラック批判が厳しかった頃から関わる機会を得て、債務超過寸前の段階から黒字化まで、凋落と復活を目の当たりにしてきました。世間でワタミはまだまだブラック企業の代名詞と思われがちですが、今や社内労組を結成してアルバイト・パートを含めたベアを実現し、離職率は1ケタ%台、口コミサイトによる「外食業界で働きやすい会社」では第10位にランクインするなど、業界全体でみてもかなりのホワイト企業化を実現させています。

 

新田氏の著書『ワタミの失敗』を読む渡邉美樹氏

 

ブラック企業に入りやすい人の特徴とは?

 

 

ーブラック企業に入りやすい人の特徴ってありますか?

言葉を選ばずいうと、「努力しないバカ」と「自信のない人」がハマりやすいんですよ。たとえば「算数がずっと苦手なまま」とか、「これまでの人生で頑張ったことなんてない」などと言い切ってしまうような人は餌食になりやすいですね。

 

これだけ「人手不足」「売り手市場」と言われてても、やはり大手有名企業やホワイト企業と呼ばれるところは圧倒的に人気で、競争倍率も数百倍から数千倍という難関なんです。当然、採用にも高いハードルが設定されていて、書類選考に筆記試験、グループディスカッションに個別面接と、その関門も5つ以上はあって、厳しくふるい分けられるわけです。そんな所に受かる人ってどんな人かというと、やはり「何らかのことをやり遂げたという実績」や、「確固たる自信」のある人ですよね。

 

一方、ブラック企業は採用基準がゆるゆるで、基本的に来る者拒まずの姿勢で誰でも採用しますから、受ければアッサリ内定が出ちゃうんですよ。これまで優良企業の厳しい選考に敗れ続けて自信を無くした人が、うっかりブラック企業の面接を受けてしまい、すぐに受かってしまって「こんな自分でも拾ってくれた!」と喜び勇んで入社してしまうケースが毎年後を絶たないので、ぜひ重々留意してほしいですね。

 

ちなみに「ブラック企業はアッサリ受かる」仕組みはこうです。劣悪な労働環境のため人がどんどん辞めていくので、採用もそのペースに合わせて常にやらないと追いつかない。でも「学生時代の経験」とか「前職の実績」なんかでヘタに絞り込もうとしたら優秀人材なんて残らないので、とりあえず頭数を揃えるために全部の条件を「不問」にするんですよ。「学歴不問!」「経験不問!」「資格不問!」などといってできるだけ多くの人数をかき集めて、面接も「一発社長面接」みたいにして雑談だけして内定。評価なんて何もしてないですよ。で、採用後は理不尽な研修や厳しい実務にいきなり放り込んで、合わない人は勝手に辞めていき、そんな環境でも必死で食らいついていくごく一部の人間だけが生き残っていく…という構図ですね。

 

結局、「ブラック企業しか行き所がなかったお前の努力不足を恨め」という話なんです。まあ、そう言うと「努力至上主義だ!」と叩かれますが。でも、自分の「学歴」にしても「学生時代に頑張ったこと」にしても、また「前職での実績」にしても、「どこかの時点で努力してたらなんとかなったチャンス」を、自分の意思で不意にしてしまってるわけですから、ある程度は自業自得の部分はありますよね。

 

大学に呼ばれて講義する際も、正直に学歴差別の実態はお伝えしてますよ。人気企業の応募者数と内定者数の差や、「就職ナビサイトの企業側管理画面には『大学別マイページ分岐設定』という名の実質的な学歴フィルターが実装されてるよ」といった話をして、現実を見てもらいます。

 

あと女子限定ネタですが、ダメンズにハマりやすい人もブラック企業にハマりやすいです(笑)

自分の容姿やファッションセンスに自信がない、小中高でスクールカーストが高い集団に入れなかった、親から否定されて育ってきた…とか。自分で自分を認められない、いわゆる「自己肯定感が低い」状態になると、心にポッカリ空いた穴を埋める何かを求めてフラフラとさまよってしまうんですね。そんなとき、「キミみたいな人を求めてたんだ!」などと言われたら嬉しいじゃないですか。そんな感じで知らないうちにブラック企業に入ってしまい、理不尽な要求をされても「ダメな自分を拾ってくれた恩義」を感じて頑張ってしまったり、無理な頑張りに対しても「よくやってくれた!」「さすがだね!」と承認されることが心地よくてハマってしまうという…

 

ブラック企業って、そういった人を採ってうまく使い倒すのが上手なんです。心当たりのある人はぜひ気をつけてくださいね。

 

ーそういう子はどうしたら良いのでしょう?

 

負のスパイラルから抜け出すには、行動あるのみです。自信なさげに「こんな大学入っちゃったからもうだめですよね」などと言う学生さんもいますが、結局Fランだろうがなんだろうが成功している人はしている。では何が違うか。それは行動して、何かしら語れる確固たる実績や、自分の強みと言えるものを持っているかどうかですよ。行動するテーマは、勉学でもバイトでも、留学でもインターンでも何でも良い。

 

そこでやるべきことをやり切ったり、プロジェクトの成功に貢献できたりすれば、少なくとも自信がつきますし、何がしかが評価されたり、自分では「当たり前にできる」と思ってたことが周囲からは「強み」だと言われるなどの気づきがあるかもしれない。だからまずは一歩踏み出してみろと伝えます。あとは成長市場を見極めることですね。成長の初期段階で、まだ競合企業が少数か未熟な状態の市場を見極めて飛び込むことができれば、実力やスキルが多少伴わなくても利益を得られ、自分自身もその過程で成長することができます。まあ、全部私の実体験なんですけどね。

 

ーブラック企業入って辞める人って、精神病んだのも自分のせいにしちゃいそうですよね?

 

「ブラック企業なんか辞めてしまえ!」と言っても、当の本人はその辞めるエネルギーさえ無くなっているということもある。精神を病むくらい抱え込んでしまうという意味ではそれだけ責任感が強いのかもしれません。そんなときは「お前がいなくても会社は回る。もう行くな、無理やり休め」くらいは言わないと伝わりませんね。貴重な戦力を使い潰すブラック企業は害悪でしかありません。

by
早稲田大学大学院卒の27歳。 Tokyo XR Startups、レオス・キャピタルワークスにおけるインターンを経て、早稲田起業家養成講座に触発されDARSと共にQ-SHOCKを開始。現在は、for Startups, Inc.でヒューマンキャピタリストとしても活躍中。趣味は読書とカフェ巡り。ビールが大好き。
SNSでフォローする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です