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全てのLGBTが自分らしく働ける社会を創る、JobRainbow星CEOの挑戦

楽しく働く人を応援するメディアを応援するメディアのQ-SHOCKをご覧の皆さん、こんにちは。タカタタンです。全てのLGBTが自分らしく働くことができる社会を目指し、LGBT向け採用・求人情報サイトを運営する「JobRainbow」で楽しく働く星さんを、インタビューしてきました。先日、ジェネシア・ベンチャーズを引受先とする5000万円の第三者割当増資を実施したということで、今後の展開についても尋ねてきました。

 

プロフィール

星 賢人 (Kento Hoshi)

1993年生まれ。ゲイ(男性同性愛者)である事を中学時代より自認し、いじめを受け不登校になった過去を持ちながらも、東京大学へ進学。大学ではLGBTサークルの代表を務め、大学院卒業後の2016年1月に株式会社JobRainbowを創業。2018年3月にはForbes 30 under 30 in Asiaに日本人唯一、社会起業家部門で選出。

 

星CEOが経営するJobRainbowってどんな会社?

–さっそくですが、先日資金調達をしたこともあり、今注力されているJobRainbowについて教えてください。

JobRainbowは、主にLGBT向け採用を行いたい企業へのコンサルティング支援と、LGBTの求職者と企業を結びつける事業を行っています。「LGBT」と「仕事」をテーマにしており、働くを虹色に、という事で「JobRainbow」という企業名になっています。虹色というのはLGBTを象徴するカラーで、多様性を表現しています。会社の理念を「全てのLGBTが自分らしく働ける社会」としてます。

 

–取引先の企業はどんなところが多いでしょうか。また、ウェルカムな企業とウェルカムでない企業があると思うのですが、どちらにアプローチしているタイミングかお聞かせください。

外資系企業や日系企業でもフラットな雰囲気のある企業が多いですね。現在はウェルカムな企業にアプローチをかけているタイミングになります。そもそも日系企業でLGBTに対してウェルカムな企業は少なく、500社程度しかありませんので、そこをまずはしっかり求人掲載していくつもりです。

ただ本当にやらなければいけないことは、全くLGBTに対する対応をしてない企業に対しコンサルをして、ウェルカムな企業を増やしていく事です。
また今は東京を中心に弊社は活動をしていますが、地方ほどカミングアウトができず自分らしく働くことが難しいので、地方にも展開を行って行かなければと思っています。

 

既存の団体がある中で、星CEOが起業を選択した理由

 



–世の中にはLGBTを支援する団体等あるかと思いますが、星さんは既存の団体などに所属する事を選択せず、なぜ起業されたのですか。

自分自身がLGBTのGでゲイにあたります。男性として生まれて自分の事を男性だと思っていますが、好きになる相手だけ他の人と少し違う。男性を好きになるという事で男性同性愛者のゲイになります。

この事に気づいたのが中学生くらいだったのですが、その時代の保健の教科書には「思春期になると自然と異性と惹かれ合う」という言葉しかなく、LGBTという言葉もなかった。“自然”と書いてあって、当てはまらないということは、自分は不自然な存在なんだなと漠然と感じました。人には言えないことなんだなと思っていました。当時いじめにもあっていて中学校生活の約半分は不登校でした。ただ幸運な事に、その時インターネットを通じてLGBTの方が世界には20人に1人、約5%くらいはいるのだと知りました。自分のクラス40人いた時にもう1人いるのだと思え、その時初めて自分は1人じゃないんだと前に進めました。

 

大学に入学した時に、自分と同じように悩んでいる人がいればそのセーフティーネットになりたいと思い、大学内のセクシャルマイノリティーサービスの代表を務めました。その中で、特に仲の良かったトランスジェンダーの友人がおり、その方は自分らしく大学生活を謳歌していたのですが、大学3年生の終わり頃、就活が始まってからエントリーシートの記入欄やスーツに悩んだりと、就活を行う上で困難なことが多くありました。
その方がある企業に対し、LGBTであることをカミングアウトをしたところ、面接官に一言、「あなたみたいな人はうちの会社にいないので帰ってください」と言われてしまい、それをキッカケに就活を諦め、さらには大学も辞めてしまいました。

それを代表として相談に乗っていたのにも限らず何もできなかったという後悔が強く残っていたこと。そして自分自身が就活をした際に、カミングアウトをしても反応の良い企業もあれば、嫌な態度をとる企業とも出会った経験から、LGBTや多様性に対し好意的な企業や取組みを行なっている企業を、しっかりLGBTの方と結びつけることができればお互いハッピーになると考え、今の会社を立ち上げました。

NPOのボランティア団体に所属した経験もありますが、助成金・寄附だけに頼って続けているところが多かったりと、コンペティティブでない給与形態や、身を削るように働いている人、助成金を得るための書類を作る事に追われる…と行った現状を目にしていました。そのような形の運営では、予算を切られ継続できなくなってしまうリスクもあります。自分は継続的にかつ長期的に支援を行える仕組み作りを行いたかったので、ビジネスとして株式会社を立ち上げました。

 

LGBTというカミングアウトは必要なのか必要ないのか

 


–先ほどの話の中で、ご友人の方がカミングアウトしたことによって、選考から弾かれてしまったとありましたが、それはどのような背景があるのですか?

実はそれだけではないと思います。きっと会社として受け入れた実績がないので人事の方は何をしたら良いか分からないし、社内に環境を整えてあげられる知識が無いという会社としての状況があったこと、加えて、個人の誤った理解があったのではないかと思います。

実際に、あるレズビアンの方が「そういう精神に病気のある人は難しいです」と言われてしまった事があるのですが、誰かを好きになる、それが異性ではなく同性ということを「精神的な病気」だと捉えてしまう、といった誤った理解によって障壁が生まれてしまったということがあるのだと思います。

 

–例えばですが、ニッチな性的嗜好を持っている方がいたとして、私はこんな趣味がありますとは言わないじゃないですか。就活の時のカミングアウトは必須なのでしょうか。

そこはとても難しくて、カミングアウトしたい人としたくない人がいます。サークル内ではカミングアウトの強制もなく、ジャッジもしませんでした。前提としてみんなが当事者であるという認識があるので、例えば女性が「この間彼女と〜」といえばレズビアンなんだな、ホルモン治療に行ってきてという話があればトランスジェンダーなのかなと理解しています。

「性的しこう」という字を我々の中では指を向くの「指向」としています。
いわゆるSMプレイとかをクィアと言ったりするのですが、クィアな性的嗜好の場合は「嗜好」という字を使ってます。「指向」は誰を好きになるか、誰を愛するのかという部分の指向。どこに性的興奮を得るのかという嗜好とは異なります。

LGBTの課題はベッドの上の話と混合されやすいのですが、それ以前に誰を好きになって誰と恋愛をするのかという話です。これはアイデンティティに関わる話なので、パートナーを異性に置き換えて話たりと隠す人は多いですね。

 

–そのような背景があるんですね…。知りませんでした。

異性愛が前提になっている社会だと思うんですね。家族とかも基本的には異性愛からなっていて、家族を最小単位として国に管理されています。日本においてLGBTは7.6%いると言われていて、これは日本の最も多い6つの名字と同じくらいの割合なんですね。でもそれだけ同じ数LGBTの友人がいるかというと、一人も会ったことがないという方も多いです。つまり多くの人がカミングアウト出来ていない現状があって、心に仕舞わざる得ない状況があるのかなと思いますね。

 

プロ就活生からいきなり起業というキャリアを選んだ背景

 

–サイバーエージェントやリクルートなど多くの企業にインターンされてきたと思うのですが、なぜ就職せず、いきなり起業されたんですか。

実は今のJobRainbowの原案ができたのは、リクルートのインターンシップ時代なのです。その時に優秀賞を獲得し、これをもっとサステナブルな形で実現していけないかとビジネスコンテストに出場したところ、そこでも優勝、その他賞を獲得することができました。実際に法人化するタイミングはもう少し遅くなることを想定していましたが、そのビジネスコンテストの優勝賞金をもらえる条件が「起業すること」だったので、起業することにしました。

当事者としてちゃんと就活しなければ人に教えられないので、就活はしっかりしていましたし、始めは就職することを考えていましたが、マイクロソフトにインターンに行った際に社内にLGBTサークルがあることを知り、このような企業があることを周りに教えたいと思ったことも一つのキッカケとなり、今JobRainbowで社内の人からの口コミを投稿できるようにしています。就活してきた事は今かなり活きています。

自分が本当にやりたいことは何かを考えた時に、LGBT向けの採用支援サービスをやっている企業は他にいなかったし、この事業は自分にしかやりきれないことだな。自分がここでやらなかったら今解決したいと思っている人たちの課題は解決されないなと思いました。自分がやるしかないじゃん。そう思って1年2年と先延ばしにするのではなく、今やろうと決断しました。

 

–起業されてどんな苦悩がありますか。

2016年1月に起業したのですが、3月から1年間アメリカに留学していました。その間はリモートで業務を行なっていたのですが両立が難しく、本格的に事業を開始したのは帰国後の2017年6月からなので実質1年ほどの会社です。その為、本当にごく一般のスタートアップ的な苦悩は勿論あり、組織の変化や資金・人といったリソースが限られた中でどうしていくのかなど、悩みました。

また様々な企業と話して、企業の考え方を変えることは非常に労力が必要で難しいことだと感じております。担当者に受け入れられなければそれだけで話が進まなくなってしまったり、その点で人の意思を変えることの難しさを実感します。

 

–難しいお仕事ですので、メンバー集めも難しそうですね。今後一緒に働いて行くメンバーはLGBTの方で構成して行くのですか、それともストレートの方もジョイン可能ですか。

姉がストレートですし、今までのインターン生にもストレートの方がいます。LGBTを理解して支援する方を「アライ」と言うのですが、アライの方がメンバーに多くいるので理解がある方でしたら勿論ウェルカムです。ただ、当事者でなければわからない課題感や当事者目線を語る必要性が高いので今の段階だと、当事者の方が活躍しやすいと思います。今後会社を拡大していくので、LGBT関係なく色んな方に活躍してもらいたいと思っています。

 

LGBTへの配慮が足りない日本で、LGBTとして働く方へ

 


–日本のLGBTへの理解は世界と比較して低いのでしょうか。

先進国の中では低いと言われています。
ただ日本は、LGBT差別を禁止する法律がない、同性婚を認める法律もない。また一方でLGBTを罰したり刑事罰になるようなものもない。つまり、積極的に差別もしていなければ、積極的に理解をしようともしていないというのが日本の現状です。

アメリカに行って感じたのは、アメリカではヘイトスピーチも非常に多く、一方寛容な人はめちゃくちゃ寛容。宗教的なバックグラウンドの影響が大きいことが理由としてありますが、日本は無宗教な人が圧倒的に多いので、強く否定をする人はあまりいない。知らない、なんとなく怖いという人が多いだけなので、ある意味日本は変わっていけるポテンシャルが高いと感じています。

 

–最後の質問です。LGBTの理解の進んでいない企業でLGBTの方が苦しんで働いていたらどうしますか。どう動いたらその方は楽になれるのでしょうか。

行動としては2つ。辞めるか、留まるか。留まる場合その人が出来る事は、会社を変える事。言えなくて悩んでいる中、行動を起こす事は難しいけれどカミングアウトとは違った形で提言を行なったり、自分で環境を作っていくことも一つ出来ることだと思います。

もう一つの選択としてはやはり辞めるしかないと思っていて、今時LGBTに理解を持てない企業は遅れていると思っています。我々はそのような企業に「ダサいよ」とメッセージを伝えています。これだけジェンダーの問題などがとりだたされている中、多様性を認められない会社はLGBTに限らずこれから先人材不足の時代に、人材を大切に出来ない会社は滅ぶしかないのかなと思っています。他にいい会社はいっぱいあると思います。

伝えたいのは、社会が大きく変わっているので、現状がこれ以上悪くなる事はないということです。2年前起業した当時はLGBTというワードすら殆ど知られておらず、サンドイッチの名称だと思われたことも多くあります。今はもうLGBTといって意味がわからない人は殆どいません。声をあげれば届くように、異質なものとして排除されないようになってきていると思うので、「安心して欲しい」と伝えたいです。

by
早稲田大学大学院卒の27歳。 Tokyo XR Startups、レオス・キャピタルワークスにおけるインターンを経て、早稲田起業家養成講座に触発されDARSと共にQ-SHOCKを開始。現在は、for Startups, Inc.でヒューマンキャピタリストとしても活躍中。趣味は読書とカフェ巡り。ビールが大好き。
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