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「金融をサービスとして再発明する」Finatextホールディングス林CEOが思い描く、金融の今と未来

最近、20年ぶりにお札が新しくなるというニュースが世間を賑わせています。10,000円札は「資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一、5,000円札は津田塾大学を創設した津田梅子、1,000円札はペスト菌を発見した北里柴三郎に変わるとのことです!そんなお金を扱う金融業界にテクノロジーを通じて革命を起こさんとする企業を、Fintech(金融=Financeと技術=Technologyを組み合わせた造語)企業と呼びます。

という事で、令和初記事は、Fintech企業、Finatextホールディングス(以下、Finatext)の、林CEOにインタビューをしてきました。

 

プロフィール

 

 

林 良太(Ryota Hayashi)Twitter : @Ryota 

1985年生まれ、東京大学経済学部卒。英ブリストル大学のComputer Scienceを経て、ドイツ銀行ロンドン投資銀行本部機関投資家営業 、ヘッジファンドを経て2013年12月Finatextを創業。手数料無料株取引アプリSTREAM、証券事業参入プラットフォーム(BaaS)を展開するスマートプラスやオルタナティブデータのプラットフォームを提供するナウキャストを傘下に持つ。

 

 

東大→外資系投資銀行→ヘッジファンド。外資系金融エリートの林CEOは何を求めて起業をしたのか

 


–さっそくですが、新卒でドイツ銀行に入社されてから起業までの経緯についてお聞かせいただけますか。

私はドイツ銀行で働いていた時ロンドンで、日本の商品を担当していました。ただ、注目されるのはアメリカや中国の市場で、日本は経済が規模が大きいのにも関わらず、誰からも注目されていませんでした。

理由は、日経平均株価が成長しておらず、むしろ下がり続けていたことでした。日経平均株価は、1980年代のバブルで4万円近くまで到達しましたが、バブルが崩壊し、2011-12年の当時は8千円台まで落ちていたこともありました。その状況で投資が盛り上がるはずもありません。

それを見て歯がゆい思いをし、日本の金融を変えるために2013年12月にFinatextを創業しました。

 

–私も、投資銀行出身の方とお会いする機会が何度かありましたが、「起業をしたい」という方に会った事がないのですが、これはなぜでしょうか。

起業するとZOZOの前澤さんみたいに億万長者になれることを想像しているかもしれませんが、起業は「お金」だけで見ると、想像以上にコスパが悪いんです。

確かに上場して一攫千金という印象もあるかもしれませんが、想像以上に毎分毎秒考えなくてはなりません。なので、会社員である程度自分の生活をキープしつつ、良い給料がもらえる方がよっぽどコスパが良いと思っています。

投資銀行の方は高学歴で頭も良いので、そこを天秤にかけてコスパが悪く見えるから、皆さん起業をしないのではないでしょうか。

 

–なるほど、、、納得しました。コスパが悪い中、林さんはどうして起業をしようと思ったんですか?

私にとっては、会社員としての生活がぬるく感じたからです。

ドイツ銀行にいた時は、25歳の若造なのに、ロンドンで投資銀行員というステータスだけで一目おかれましたし、一見充実していました。そんな中、仕事は忙しいけど、ルーティンワークでこなせてしまっていました。

一方、新規事業開発や起業をするとなったら、人がいないしお金もない、みんなにバカにされる。基本的には八方塞がりの状態から始まります。そこから立ちふさがる壁のヒビみたいなものを見つけて、無理やりこじ開けるのが新規事業や起業です。

この知的作業がかなり楽しいので自分で会社をやっています。

私は今でも、「月曜日早く会社行きたいなー、金曜日みんなに会えなくなって寂しいな」と皆がなる楽しい会社を目指してます!!

 

Finatextがユーザーに寄り添うサービスを作るようになったキッカケ

 

 

–確かに、会社の雰囲気が金融の会社とは思えないほどとても明るいです!金融サービスって、とても堅いイメージがあったのですが、展開すSTREAMなど、触ると非常に使いやすい。ユーザーに寄り添ったサービスを展開しようと考えるようになった経緯をお聞かせいただけますか?

 

創業当初は元グローバル金融マンという肩書きを捨てられずにいました。例えば、トレードの際に、難解な数式を用いて分析していました。

でも一般のユーザーには難解な式はわからないし、そもそも彼らはそこに楽しさを見出しません。だから、昔プロトタイプを2個作って、全くユーザーに刺さらなかった。理由はシンプルで、ユーザーの求めているものではなかったからです。黒歴史ですね、、、。

サービスを展開する中で、ユーザーにとって、自分がどういう経歴を持っているかはどうでもいいということに気づきました。プライドを捨て去るまでに1年間くらいかかりました。

今は、シンプルさや、面白さを追求し、ワクワクする要素を盛り込み、もっともっとユーザーが投資したくなるサービスをどんどん作っています。

 

金融業界の仕組みを知っているからこそ実現!日本初の手数料無料

 

 

–黒歴史があったからこそ、ユーザーに寄り添えるサービスを展開できているんですね。Finatextが運営するサービスSTREAMは株の取引手数料が無料ですが、どうやって手数料無料を可能にしているんですか?Finatextは損をしているんじゃないですか?

金融業界はそもそも手数料が主な収益源になっているので、ここをゼロにするには勇気が要りました。

しかし、ユーザーは複雑な手数料体系を見ただけで、「難しそう」と手を付けなくなってします。

ユーザー視点で考えると、難しさを一切排除した金融サービスの方が「わかりやすい」し、金融サービスに対するハードルが一段下がると確信していました。

手数料無料を成り立たせるべく、どうしたらいいか知恵を絞り、下記三つの方法を考案しました。

1つは、証券業界では一般的ですが、信用取引の金利収入を得るという方法です。

基本的に株取引は株の購入者自身が持っている現金を元に株を売買をしますが、所有している現金以上にお金や株を借りて売買をすることができます(信用取引)。そのお金の貸付に金利が発生します。

2つめは、今まで機関投資家(個人ではないプロの投資家)しか売買ができなかったマーケットを使うことで収益を得るという方法です。

このマーケットは個人投資家向けに使えないという制限はなかったものの、機関投資家向けのマーケットというイメージが強く、個人投資家には開放されていませんでした。

このマーケットを使うことは、通常東証で売買する株価よりも安く買えたり高く売れたりするので、個人投資家にとってもプラスです。

私たちは、ユーザーがこのマーケットで売買出来た際、東証の株価との差額の一部をいただきます。ユーザーにとっても東証で売買するよりお得に取引ができ、私たちも手数料をいただけて、お互いにとってwin-winの手数料体系なのです。

3つめは証券サービスのプラットフォーム収入です。

私たちは、サービスやアプリの裏にある証券プラットフォームを運営しています。このプラットフォームを、サービスを提供したい非証券会社に提供することにより、その企業は証券サービスを低いコストで立ち上げることができます。

私たちはこのプラットフォームの利用料を企業からいただきます。

少し難しい内容だったかもしれませんが、要は今までの証券会社の収益モデルとは違う収益源を考えたことで手数料無料を実現することができたということです!

※STREAMの詳細、ダウンロード、口座開設はコチラから!

 

Finatextが思い描くミレニアル世代と金融の未来

 

 

–ちょっと難しかったです!他にも、林さんが、ユーザーに寄り添ったサービスを作るために実践していることを教えてください!

私たちは、創業当初からユーザー会を開催しています。「あすかぶ!」がスタートしユーザーが1日200人くらいの時、頻繁にコメントしてくださる方がいたので、連絡して品川で僕とコミュニティーマネージャーでサシ飲みをしたのが始まりです。最初からずっと来て下さっている方もいて、今でも何人ものユーザーとLINEで繋がってます(笑)

今では、ユーザー同士も仲良くなっていただけるように、ユーザー会では一方的に何かを教えるのではなく、ディスカッションなどを通して、ユーザー同士が横で繋がれて、その場で自ら学び取ってもらえるようにプログラムを組んでます。

 

–最先端のFintech企業なのに泥臭いところをやっていらっしゃるのですね。

デジタルオンパレードな時代だからこそ距離感が大事だと思っています。特に金融は送金であろうと株であろうと手数料が多少違うくらいでサービス自体はみんな同じです。だからこそ「信頼」で差がついてきます。

信頼は歴史で担保するか、会社が好きかで担保するか。Finatextは歴史が浅いから、ユーザーさんとの距離感を大事にすることで、会社を好きになってもらって、信頼を担保しようとしています。

 

–Finatextは現在、様々なサービスを展開していますが、長い時間軸で「世界をこうしたい」って言う野望はありますか?

ミッションは「金融をサービスとして再発明する」です。だから、究極的には、金融をもっとフェアに使いやすくしたいんです。現在もFintech界は盛り上がっていて楽しく見える裏側で、情報量の格差を利用して、情報弱者から稼いでいる人たちがいます。この問題を解決して行きたいんです。

 

–ユーザーのターゲットを20代から40代っておっしゃってましたがその層を狙っている背景はありますか?

ミレニアル世代をターゲットにしています。例えば、20代で今の既存の証券会社を使っている人は多くない。つまり、彼らはまだどこにも染まっていない白紙の状態です。その世代は今はお金を持っていないので金融機関もターゲットにしづらい。そこを私たちが刺さるサービスを作れれば、彼らが50歳になってお金を持った時に、スマートプラス 、Finatextを当然使いますよね、という前提を作れる。私たちは、20年後を見据えた時間軸で考えて事業をしています。

 

とにかく明るい林CEOに聞く、楽しく働くTips

 


–林さんはいつ会ってもすごく陽気で明るいですが、元々ハイテンションな方だったのですか?楽しく働きたいという方にオススメの本などあったら教えてください!

元々ハイテンションです!でもハイテンションって実は難しいんですよ。常にデフォでハイテンションではないです(笑)

私のオススメの本「上機嫌の作法」にも書いてあることで、ハイテンションは意志であり、テンションが低いのは状態でしかない。つまり、明るくしようというスタンスは、気分をコントロールできる知性の表れです。

 

–オススメ本と合わせて教えて欲しいのですが、林さんの師匠にについても教えてください!

経営の師匠というか勝手に自分が師匠と認定してるのは2人いて、1人は父親です。

父親はオプトランという東証1部上場会社の経営者です。上場企業の経営者というと偉い感じですが、全く偉そうにするそぶりがなく、彼から学ぶことは多かったです。

例えば、勝算のないことはしない安全経営は父の影響です。もし私が上場したら日本で初めて文字通りの親子上場になります(笑)

もう1人は稲盛和夫です。私は完全に稲盛和夫信者の一人で、彼の著書「生き方」はオススメです!

その中に 《仕事の成果 = 向かう方向 x 情熱 x 頭の良さ》という人生の方程式があります。これは楽しく働く上でも非常に重要な方程式だと思っています。

まず、向かう方向。これが間違っていると、いくら努力しても目標にはたどり着かない。だからまず、方向を正しくしなければならない。これを私なりに要約すると、「邪神をもたず、しっかり考えながら、気合いれて働け」って書いてあります!

この本のおかげで考え方が整理され、私は頭が良いキャラではなく、情熱キャラになろうと決心しました。(笑)

頭の良さは持って生まれたところがあります。手前味噌ですが、当社CFOの伊藤やエンジニアの面々、データサイエンティストなどは、桁違いに頭が良いから、頭の良さを彼に任せ、私は情熱を燃やして、チームで成果を出していこうと思いました!

仕事はチームでする場合も多いですが、自分の立ち位置を把握し、自分の強みに基づいて考え、振り切って行動をすることが、楽しく働けるコツだと思います。

 

by
早稲田大学大学院卒の27歳。 Tokyo XR Startups、レオス・キャピタルワークスにおけるインターンを経て、早稲田起業家養成講座に触発されDARSと共にQ-SHOCKを開始。現在は、for Startups, Inc.でヒューマンキャピタリストとしても活躍中。趣味は読書とカフェ巡り。ビールが大好き。
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