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「採用ルール廃止」後の大学と企業の繋ぎ方:田中教授の就活論

楽しく働く人を応援するメディアQ-SHOCKをご覧のみなさん、はじめまして豪Uです。今回は、法政大学キャリアデザイン学部教授の田中研之輔教授にタカタタンが取材させていただき、豪Uが編集させていただきました。これまでの経緯やキャリア論、インターンなどについてもお話ししていただきました。は現在、法政大学に在学しており大学の講義などで、とてもお世話になっている教授です。

 

プロフィール

田中 研之輔 (Kennosuke Tanaka)

1976年生まれ。法政大学キャリアデザイン学部教授。博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科博士課程を経て、メルボルン大学、カルフォルニア大学バークレイ校で客員研究員をつとめる。2008年に帰国。専攻は社会学、ライフキャリア論。著書に「先生は教えてくれない大学のトリセツ」「先生は教えてくれない就活のトリセツ」など。

 

 

田中教授の大学教員としての仕事の軸とは

 

 

 

ー田中教授は法政大学に着任し、ちょうど10年なのですね。どんな事を大事に思い、授業されていますか?

私が、法政大学の教員として一番大事にしている事は「社会との距離を近づけること」です。それを自分のライフワークとしています。大学教員は専門領域をもつ研究者なので、専門領域によっては社会との距離が遠くなるひとも少なくありません。私は日本一社会との距離が近い大学教員ということを自分の仕事の軸にしていますね。

私の専門とも関連するのですが、私自身現場での経験や知識を大切にするフィールドワーカーなので実際にビジネスシーンに赴き、そこで得た知識や経験を大学に持ち帰ります。そうした経験の中で、「私が持っていない知識や経験を語れる人」をゲストスピーカーとして招聘し始めました。自分が知らない人や知らないことに毎日出会いたい、ということも大切にしています。

 

ビジネスと大学との架け橋に

   

 

ー田中教授ほどの行動力があれば例えば大学教授ではなくてもビジネスシーンでアグレッシブに動くこともできると思うのですが大学に籍を置くというのはどうしてなのですか?

私のような人間が大学の中にいることも意味があるのではと感じています。特に、ビジネスと大学をつなぐというバイパス的な役割を担うことは、社会で活躍する次世代を育てるという点で非常に大切なことではないかと考えているのです。大学教員は、教育にビジネスは必要ないとみなさん言います。しかし教科書は売っているし、みなさん服を選び着ているじゃないですか。服をデザインする人がいる、服を作る人がいる。そしてそれを売る人がいる。そしてそれを買っている。教育の現場にもビジネス的な視点は不可欠なのです。

私は自分のことをアカデミックトレーナーと呼んでいます。学生がインターンに行き、終わった後にどうだったかをただ聞くのではなく、インターンに行かせている間に細かくフィードバックをしたり思考の動作の細部をアドバイスをしています。アスリートのパフォーマンスを引き上げるフィジカルトレーナーのように学生を成長させ、ピークを持っていくときに何が足りていないのか、どこのバランスが悪いのか、どの辺を強くしたらパフォーマンスが上がるのかというのを考えています。

 

ーブルーオーシャンを探すのが上手ですね

常に探しますね。渋滞が嫌いだから車の通りが少ない脇道を探すことと同様ですね笑。頭を使うのはそこだと思っています。自分の位置や自分の持ち物のことを私はキァリアキャピタルと言っています。キャリアキャピタルを武器にすればいいんです。出来る学生と結果が思うように出ない学生はとの差はその点で、 結果をだす学生はどうすればキャリアキャピタルを武器にできるか頭を使っています。私も昔からキャリアキャピタルを武器にするのが得意だったのかもしれません。

例えば、私が「先生は教えてくれない大学のトリセツ」と「先生は教えてくれない就活のトリセツ」という姉妹本を書いたのも、キャリアキャピタルを使った結果です。

大学の内側の人が書いた方が、他の専門家が書いたものよりも届きやすい。 にも関わらず、就活に関して学生の経験を踏まえてリアルに語る大学教員はほぼいません。専門書は自分の知識を認めてくれる世界にだけ書けばいいんです。大学生の9割が就活をして就職をしていくのであれば、なにか言わないのは無責任だと思うんです。 大学で学問を学んだとしても、就職したら直接的には使いづらい。だから私は、就職しても使えることも教えようと思うんです。

 

田中教授の考える現在のキャリア論とその問題点とは

 

 

ー「先生は教えてくれない就活のトリセツ」で小中高におけるキャリア論というところで日本の現状についてどう思いますか?

私自身が考えるキャリア教育のポイントは、自分の知らない世界にいる人の「目線」や「感性」に一度寄り添ってみるということです。全然知らない人の価値観や経験に一回自分を委ねてみて、自分の幅を広げる。そのような経験をなるべく早い段階から積むことが大切です。経験の幅が広いほうが、働き方に関しても柔軟に対応できます。

学生を見ていると、「働き方はこうあるべき」と思い込んでしまった学生が実際に現場に飛び込んで、ギャップを感じた時に一番苦労してしまう。働き方のイメージと現実がずれると簡単に辞めていってしまうんです。だから、いろいろ経験して自分の幅を広げておくことで柔軟な対応に繋がるのですね。

 

「失敗から学ぶ」学生にインターンを勧めるわけ

 

 

ー田中教授は学生にインターンをすごく進めていらっしゃいますよね

はい。インターンでとにかく失敗して欲しいと思います。理想は2年生からインターンをして3社くらいで経験を積んで欲しいです。少なくても、中期もしくは長期で1社2社やってほしいと思っています。そこでいろいろな経験を積ませてもらうのがいいと思います。大学生のみんなが忙しいことは知っています。ただ、時間の使い方はまだまだ改善できます。私も、常に自分の時間のレバレッジを考えて行動しています。いま書いている本が次の5年にどのようなインパクトがあるかを予測して書いています。

私は、この本で「内定なんかどうでもいい」ということも言いたかった。内定したのはいい。しかし、内定して終わりではなくそれから半年から長い場合には10ヶ月程度あります。内定してから数年間働くビジョンは本当にあるのかを常に自分自身に問いかけて欲しいのです。就活の目的が内定をとることにあるなら、それは間違っています。なぜなら人生100年あり、100年あって22歳の時に決めた1社なんて文字通りファーストステップでしかないからです。ただし、ネットワークも経験もそれこそ職業も、1社目での経験が2社目や3社目につながるので、大事な一歩であることには変わりありませんが。

 

就活を「自分探しゲーム」ではなく「相手を知ろうゲーム」にする

 

 

ー田中教授が考える就活の際に注意すべき点はなんですか?

就活のときに起きている病は自分探しです。でも、社会人経験がない学生が自分探しを内側だけでやろうとしてしまうと、苦しいゲームになってしまう。だから就活を、苦しい自分探しゲームではなく、相手を知ろうゲームとして捉えることをオススメしてます。

私は約10年間学生を見てきました。学生らの中には、自己分析に集中しても、結局自分が見えず、どこを受けていいのかわからないと苦しむことに終始している人が少なくありません。

社会に出ると、どんな仕事でも一人でする仕事はないんです。 だから、関わる人に対し、想像力を持つ事が大事になるのです。社会人でさえもあなたの軸はなんですかと聞かれて答えられない人は多いです。しかしそのなかでも、自分が働いている会社ではこれをしたい、この会社での僕の強みはこれです、と言えます。それは、周りとの比較から、自分の強みを提示できるわけです。

私は就活のなかで自己分析にこだわりすぎる必要はないと思っています。相手を知る事がまず先で、次に自分が見えてきたら良いと思います。自分の軸は何なのかを自分の中から見つけ出すより、いろんな人の生き方や働き方に触れる過程で何となく自分らしさがみえてくればいいのです。

 

 

コミュニティーへの露出度を高めることの重要性とは

 

 

ー先ほど「時間の使い方はまだまだある」というお話がありましたが学生がいまのうちからできることはなんだと思いますか?

自分の中で答えを出そうと悩まずに、まずいろいろな人に会って、話を聞くことです。それを大学3年生の後期にやっていると遅いため私たちは1年前倒して大学2年生の頃からやっています。ものすごい効果があります。みんなそうやってインターンなどを通じて就職先も見つけてきます。 また、人は1対1で伸ばす力と、20人とか30人での場の中でのやり取りを通して身につける力、この両方がバランス良く必要です。特に自分が経験しえていない経験ができるようなコミュニティーにどれだけ飛び込めるか、がとても大切です。だから私は、その背中を押しています。

 

主体的につくり出し予想外なキャパシティーを広げていける人材を

 

 

ーいま現在されている活動を通して身近な意味でどうしていきたいですか?

1人でできることはとても限られていますし、自分の考えを押し付けるつもりは全くありません。私が今、一番コミットしているのは、本人が考えてもいなかった飛び込んでいって能力を磨き、それによって活躍できるアリーナを広げていける人材を1人でも多く輩出することです。その学生たちが社会人としてそれぞれの現場で飛躍していくのが理想かなと思います。

だからまず、何事もやらされていると感じる学生を減らしたいです。自らつくりだす学生を増やすことを意識しています。力を発揮する場所や内容はなんでも構いません。単なる消費者ではなく自分で自分の与えられることを作れる学生を増やすことが飛び込んで言っています。

そのためには、苦手だと思うことにあえて向き合うのもおすすめです。自分とは関係ないと感じる事柄に興味をもち、避けることなく飛び込んでいくと、そこにはあなた自身がみえてなかった世界が広がっているし、その世界に身を置いて見ることで気がつかないうちにあなた自身の成長にも繋がっているのです。

 さあ、大学の「外」へと果敢に飛び出していきましょう。

 

 

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法政大学キャリアデザイン学部2年 現在Q-SHOCKのSHOCKERとして活動。 趣味はドライブとプロ野球観戦。
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